革靴のカビの取り方と予防方法|革を傷めない正しい除去ステップ
革に生えるカビは、長く仕舞い込んでいた一足ほど起こりやすいトラブルです。
カビを見つけると、もう履けないのではないかと不安になるかもしれません。ですが、多くの場合は正しい手順を踏めば取り除くことができます。
ただし、自己流の方法で対処すると、カビと引き換えに革そのものを傷めてしまうこともあります。
この記事では、カビの状態の見極め方から、革を傷めない除去の手順、そして再発を防ぐための予防方法までを順に解説します。
除去を始める前に:カビの状態を確認する
カビの種類が違っても、除去する手順そのものは変わりません。ただ、種類によって「どの程度まできれいになるか」の目安が異なります。
なかには完全に元のきれいな状態に戻すのが難しい種類のカビもありますので、まずはご自身の靴の状態を確認してみてください。
カビの種類は色で判別することができます。
白カビ:ほぼ元通りにきれいになる

表面に白い粉のようなものが付着している状態です。カビの根(菌糸)が革の繊維のごく浅い層に留まっているため、ほとんどの場合、跡を残さずきれいになります。
緑カビ:見た目はきれいになるが、再発に注意

革の繊維にカビの根が入り込み始めている状態です。少し跡が残ることもありますが、ほとんどの場合はきれいになります。
カビの根が残っていると再発するので、白カビよりも念入りに除菌することが大切です。
黒カビ:跡が残る可能性が高い

カビの根が革の繊維を分解しながら深く侵食し、革に染みができてしまっている状態です。この染みはクリーニングのプロであっても完全に元通りにするのは困難です。
ただ、正しい除去ステップを踏めば、菌を死滅させて染みがこれ以上広がるのを防ぐことは可能です。
カビを除去する前の下準備
カビの除去において、下準備は作業そのものと同じくらい重要です。
作業環境を整える
まずは作業する環境について解説します。押さえるべきポイントは以下の 2 つです。
- 換気の良い屋内、または屋外で行うこと
- マスクを着用すること
作業中はカビの胞子(種)が周囲に飛散します。飛散した胞子が他の靴や家具に付着すると、新たなカビの原因になってしまいます。
また、カビの胞子を吸い込むと、くしゃみや咳などのアレルギー反応を引き起こしたり、肺に悪影響を及ぼしたりするなどの健康上のリスクがあります。
自分の大切な持ち物と身体を守るために、この 2 つは必ず守ってください。
カビ取り専用の道具を用意する
次に、カビの除去に必要な道具を解説します。

1. 馬毛ブラシ
表面のカビを払い落とすために使います。
カビの除去専用で用意できればベストですが、もし普段の靴の手入れにも流用したい場合は、作業後にアルコールなどで念入りに除菌してください。
2. 革靴専用クリーナー
除菌成分が配合された革靴専用のクリーナーです。
通常の靴クリーナーだけでは、革の内部に根を張ったカビ菌を死滅させることができませんので、カビにも効く強力なクリーナーを用意します。
この記事では、Saphir(サフィール)の Reno Cleaner(レノクリーナー)を使用しています。
強力なクリーナーなので、繊細な革に使用すると色落ちするリスクがあります。土踏まず部分やタン(ベロ)など、目立たないところでテストをしてから使用してください。
3. 布
クリーナーを塗布するためのネル生地や古い T シャツの切り端を用意します。作業でカビが付着するため、使用後は廃棄してください。
4. 柄付きブラシ(細かい部分にカビがある場合)
場合によっては、柄付きブラシがあると便利です。
コバや革の重なりの部分にカビが繁殖している場合、布だけでは取りきれません。
その場合は、細かい部分をきれいにできる柄が付いたブラシを用意してください。
5. クリーム
除菌作業後の革は、水分と油分が抜けている状態です。水分・油分を補給するための乳化性クリームを用意します。
カビを除去する手順
作業環境と道具が準備できたら、作業を始めます。
カビの除去で最も大切なのは、目に見えるカビの「胞子(種)」を払うだけでなく、目に見えない「菌糸(根)」まで根絶することです。
一見きれいになったように見えても、繊維に菌糸が残っていればすぐに再発してしまいます。
ご自身の大切な一足を確実にきれいにし、なおかつ再発を防ぐために、これからご紹介する手順のひとつひとつを丁寧に進めてみてください。
手順 1:馬毛ブラシでカビを払い落とす
まず、馬毛ブラシを使って表面に見えるカビを払い落とします。
コバの周りや革が重なっている部分にカビが生えている場合は、重点的にブラッシングします。
ブラシをしっかり握り、強めに素早く動かすのがコツです。
手順 2:布でカビを拭き取る
布にクリーナーを染み込ませ、カビを拭き取ります。
カビが生えている箇所以外にも胞子が付着している場合が多いため、靴のタンの部分などを含め、靴全体を拭きます。
一度では全体を拭ききれないため、3 〜 4 回に分けてクリーナーを取り直しながら拭いていきます。
一度拭き取った面にカビの胞子が再付着するため、布の面は次々に変えて、常にきれいな面が革に当たるようにしてください。
強く擦ると革の表面が傷んでしまうため、優しくさするように拭くのがコツです。
手順 3:柄付きブラシでカビを取る(細かい部分にカビがある場合)
コバの周りや革が重なっている箇所など、細かい部分にカビが付着し、布で拭き取りきれない場合があります。
その場合は、柄付きブラシにクリーナーを染み込ませて、細かい部分をブラッシングしましょう。
そうすることで、クリーナーが細部に行き渡り、カビを取りつつ除菌することができます。
手順 4:風通しの良い日陰で乾かす
拭き上げが終わったら、風通しの良い日陰で 1 〜 2 日ほどしっかりと乾かします。
直射日光に当てると革が硬化し、ひび割れを招きます。必ず日陰で乾かしてください。
手順 5:クリームで革を保湿する
完全が乾いたら、クリームによる保湿を行います。
クリーナーを使った後の革は水分と油分が抜け、ひび割れやすく、艶も失われた状態です。
布を指に巻き付けてクリームを少量ずつ取り、数回に分けて靴全体に塗り込みます。
最後に乾拭きをして艶を出せば、カビの除去は完了です。
酢やアルコールの使用を避けるべき理由
カビ除去に使用できる身近な代用品として、酢やアルコールが紹介されることがあります。
ですが、私は必ず革靴専用クリーナーを使用するようにしています。
酢やアルコールにも、カビ菌に対する一定の効果はあります。酢に含まれる酢酸には菌の増殖を抑える「静菌作用」がありますし、アルコールには菌の細胞膜を破壊する「除菌作用」があります。
ただし、カビを除去するのと引き換えに、以下の 2 つのトラブルが起きる可能性があります。
1. 酢を使うと「革の変質と悪臭」のリスクがある
酢は酸性なので、革を構成するタンパク質の結合を壊す恐れがあります。
その結果、革が硬化したり、表面がガサガサになったりと、革そのものの寿命を縮めてしまう可能性があります。
また、酢独特の臭いが革の繊維に染み付いて取れなくなるリスクもあります。
2. アルコールを使うと「色落ちとひび割れ」のリスクがある
アルコールは、色落ちを招くことが非常に多いです。
アルコールには革の染料を溶かす性質があるため、塗った瞬間に染料が溶け出し、修復が難しい色落ちができることがあります。
また、アルコールが揮発する際に、革の内部に本来必要な水分や油分まで奪って蒸発してしまいます。その結果、革が縮んだり、最悪の場合は取り返しのつかないひび割れ(クラック)の原因になります。
これらのトラブルを避けるためにも、革への影響を考えて作られている革靴専用クリーナーを使用してください。
カビの予防方法
カビは一度取り除いても、原因が残っていれば再び生えてきます。
カビが育つために必要なのは、主に「栄養」と「湿気」です。裏を返せば、この 2 つを断つことが、そのまま予防につながります。
特別な道具も技術も要りません。日々のちょっとした習慣で、カビの発生はぐっと抑えられます。
ここでは、今日から実践できる 2 つの予防方法を紹介します。
1. 定期的にブラッシングする
革表面についた埃はカビの栄養源となります。
そのため、よく履く靴だけでなく、しばらく履かない靴も 2 〜 3 ヶ月に一度は下駄箱から出し、ブラシで埃を払う。それだけでカビの発生率は大きく下がります。
この「定期的なブラッシング」を習慣にすることが、カビ防止には一番効果的です。
2. 適切な保管をする
カビは、長期保管をしている間に発生することが多いものです。
特に高温・多湿な場所にしまうと、次に履こうと取り出したときには、すでに革の奥までカビが侵食していた、という事態になりかねません。
長期保管の際は、ただクローゼットにしまい込むのではなく、カビを生やさない環境を整えることが大切です。
詳細については下記の記事で解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
革靴に生えたカビは、決して「修復不可能なダメージ」ではありません。正しい道具を選び、理にかなった手順を踏めば、その靴はまた現役として活躍してくれます。
大切なのは、表面の汚れを落とすだけでなく、革の状態を適切にコントロールし続けることです。この記事が、あなたの大切な一足をカビから守り、より長く愛用するための確かなガイドになれば幸いです。