革靴の汚れを除去してきれいにする手順|正しい道具・手順とやってはいけないこと
革靴は、日々の使用のなかで少しずつ汚れていきます。
定期的な手入れは、革靴を長く履き続けるために欠かせません。
ただ、「何を使えばいいのか」と迷ったまま作業に入ると、革の表面を傷めたり、取り返しのつかない染みや変色を残してしまうことがあります。
この記事では、手入れが必要な箇所、それぞれに使う道具と手順、そして使ってはいけないものを順に解説します。
革靴をきれいにする上で押さえるべき 3 つの箇所
革靴をきれいにする際に意識すべき箇所は、主に次の 3 箇所です。
- アッパー(甲革)
- ライニング(内側)
- ソール(革底)
革靴は、私たちが身につけるもののなかでも、特に過酷な環境に置かれています。
ソールは私たちの体重を支えながら常に路面と擦れ続けます。アッパーには、舞い上がった砂埃やチリが付着し、雨の日には泥水などが染み込みます。
また、足からは 1 日あたりコップ 1 杯分ほどの汗が出ると言われており、その大半をライニング(靴の内側)が吸い続けます。
上に挙げた 3 箇所にはそれぞれ別のトラブルが起きるため、各箇所に合った道具・手順できれいな状態を保つ必要があります。
アッパー(甲革)をきれいにする

アッパーは、最も目に触れる部分であり、砂埃やチリなどの汚れが分かりやすい箇所です。
革の表面の汚れが蓄積すると、革本来の油分が失われて表面が乾燥します。そうなると、発色が悪くなり色褪せが目立つようになってきます。
さらに、過度に乾燥した革は、屈曲部にひび割れが生じます。ひび割れが深くなると、クリームによる補修で対応できる範囲を超えてしまい、回復が困難になります。
つまり、アッパーをきれいに保つことは、ただ単に見た目をきれいにするだけではなく、長く履くために必要なメンテナンスとも言えます。
必要な道具

1. 馬毛ブラシ
アッパー表面の埃や乾いた汚れを払い落とすために使います。
2. レザーローション
レザーローションは、馬毛ブラシで落とせない汚れや古いクリームを除去し、革に油分と水分を与えるために使います。
この記事では、サフィールノワールのレザーローションを使用しています。
汚れ落としと革の保革だけでなく、ツヤを与えることもできる便利なローションです。
塗ったときの伸びがよく、色を問わず使えて汎用性が高いので、どのレザーローションを選べばよいか迷った方はぜひ試してみてください。
3. 布
レザーローションを革に塗布し、汚れを拭き取るために使います。
綿素材の柔らかい布が適しています。古い T シャツなどを裁断して使用してもかまいません。
それでは、これらの道具を使用した実際の手順を解説します。
手順 1:馬毛ブラシで埃を払い落とす
まず、手入れの邪魔にならないようにシューレースを外し、馬毛ブラシを使ってアッパー全体の埃を払います。
ウェルト(アッパーとソールの境目)や、革の縫い目周辺は埃が溜まりやすい箇所なので、意識的にブラシを当てます。
この段階で汚れをできるだけ落としておくことで、次のステップのローションが革に浸透しやすくなります。
手順 2:レザーローションを塗布する
ローションを布に取り、アッパー全体に塗布します。布に取るローションの量はコイン 0.5 〜 1 枚分のサイズを目安にします。
強く擦るのではなく、優しく塗り広げるようなイメージです。
一度では塗りきれないため、2 〜 3 回ローションを布に取って塗る作業を繰り返し、全体に満遍なく塗ります。
シワの部分は、汚れが溜まりやすかったり、乾燥が進んで革が傷みやすかったりします。細かいシワの谷部分にもローションが入るように、シワの方向に沿って、しっかりとローションを塗り込みましょう。
全体に塗布したら、2 〜 3分乾燥させます。
手順 3:布で乾拭きする
乾いた布のきれいな面を使い、余分なローションを拭き取ります。
表面を優しく乾拭きすることでローションの薄い膜ができ、革に光沢が生まれます。
力を入れず、全体を素早く均一に拭き取ってください。特に、シワの部分にはローションが残りやすいので、シワの方向に沿って乾拭きします。
最後に紐を通したら完了です。
ライニング(内側)をきれいにする

ライニング(靴の内側)の手入れは、見た目を良くするために行うわけではなく、主に臭いを予防・除去するために行います。
ライニングは、足から出る汗や皮脂・湿気を吸収します。放置すると雑菌が増殖して臭いが発生します。
一度染み込んだ臭いは、除去するのに時間がかかってしまうため、臭いが定着しないよう定期的な手入れが大切です。
ライニングの素材には、レザーとファブリック(布)の 2 種類がありますが、この記事では紳士靴によく使われる革のライニングに特化して解説します。
必要な道具

1. 除菌シート
除菌効果のあるウェットティッシュを用意します。特に革用のものでなくてかまいません。
2. デオドラントスプレー(臭いが気になる場合のみ)
臭いが気になる場合のみ、除菌シートに加え、デオドラントスプレーを使います。
この記事では、サフィールのメントールデオドラントスプレーを使います。
手順 1:除菌シートでライニングを拭く
除菌シートでライニングをきれいに拭き取ります。
ヒールカウンターやインソールまで、全体をしっかりと拭き切りましょう。
つま先の先端は拭き残しが出やすいので、手を靴の奥まで入れて、できるだけ拭き取ります。
手順 2:デオドラントスプレーを吹く(臭いが気になる場合のみ)
デオドラントスプレーを吹きかけます。スプレーを吹きかけたら、15 分ほど乾かします。
一度では臭いが取り切れない場合は、定期的にスプレーを吹くと、だんだんと臭いが弱まってきます。
これで、ライニングの手入れは終わりです。
ソール(革底)をきれいにする

ソールは地面と直接接する部分です。
履けば泥や砂利といった汚れは必ず付くので、見た目をきれいにする必要性を感じにくいかもしれません。
ただ、油分不足で柔軟性を失ったレザーソールは、摩耗やひび割れが起きやすくなるほか、水分の急な浸透による内部の水染みといったトラブルを引き起こします。
長く履き続けるためのメンテナンスという意味では、ソールを定期的に手入れすることも大切です。
アッパーやライニングほどの頻度で手入れを行う必要はありませんが、ソールにも目を向けて、乾燥しているようであれば、以下のメンテナンスを行ってください。
必要な道具

1. 馬毛ブラシ
ソールに付いた泥や砂を落とすために使います。
アッパー用と同じ馬毛ブラシを使用して構いませんが、ソールはアッパーより汚れが激しいため、専用のブラシを別に用意することをおすすめします。
2. ソールコンディショナー
ソールに油分を与えるために使用します。
この記事では、サフィールの Sole Guard(ソールガード)を使用しています。
3. 柄付きブラシ
ソールコンディショナーをソールに塗るために使います。
4. 小皿
ソールコンディショナー用の容器です。
手順 1:馬毛ブラシで埃を払い落とす
まず、ソールについた泥や砂を、馬毛ブラシで払い落とします。
ブラッシングをすると、その場で砂やチリが落ちるため、玄関先や屋外で行いましょう。
濡れた状態で作業をしても、ソールコンディショナーが定着しづらく効果が半減します。
雨の日に履いたあとであれば、1 〜 2 日乾かしてから手順に入ってください。
手順 2:ソールコンディショナーを塗る
ソールコンディショナーを小皿に入れます。
出しすぎると使い切れないかもしれないため、最初は少ない量を小皿に取り、足りなくなったら足すようにしてください。
次に、柄付きブラシでソールコンディショナーを均一に塗布します。
作業自体はこれで終わりです。あとはしっかりと乾かします。
乾かす時間は、メーカーの推奨は 1 時間程度です。ただ、塗布量や革への浸透の仕方の違いによって、完全に乾くまでの時間は個体差があります。
そのため、個人的には半日ほど置いて完全に乾くのを待つことをおすすめします。
染みやカビ・傷への対処法
ここまで解説してきた通常の手入れでは追いつかない汚れや傷みもあります。
その多くは、原因が革の表面ではなく内部にまで及んでいるケースです。表面だけを拭き取って済ませようとすると、かえって状態を悪化させることがあります。
汚れの種類を見極めた上で、それぞれに合った手順を踏んでください。
染み(水染み・塩吹き)ができている場合

雨に濡れたあと、十分に拭き取らないまま放置すると、革の表面に輪のような跡が残ることがあります。これが「水染み」です。
また、汗を吸い続けた革靴がふたたび濡れたとき、汗に含まれるミネラル分が表面に浮き出て、白い跡として現れることがあります。これは「塩吹き」と呼ばれます。
どちらも、部分的に拭き取ろうとすると、染みの輪郭がかえって際立ってしまいます。靴全体を均一に湿らせてから、ゆっくり乾かしていくのが基本的なアプローチです。
詳しい手順は、別の記事で解説しています。
カビが発生している場合
湿気の高い環境に長く保管していると、革に付いた汚れを栄養源としてカビが繁殖することがあります。
布で拭き取っただけでは菌糸が革の内部に残り、しばらくすると同じ場所から再発生します。完全に除去するには、専用のクリーナーを用いて、決められた手順を踏む必要があります。
家庭にあるアルコールや酢で代用するのは避けてください。革の繊維にダメージを与え、変色や硬化の原因になります。
詳しい手順は、別の記事で解説します。
傷が付いている場合

革靴の傷は、革の表面層(吟面)に対するダメージの深さによって、「表面の擦れ」「浅い傷」「深い傷」の 3 種類に分けられます。
それぞれ補修に用いる道具と手順が異なり、深いものほど自分での対処は難しくなります。
傷の見分け方と直し方については、別の記事で詳しく解説しています。
革靴をきれいにする上で使ってはいけないもの
市販されている洗剤や日用品のなかには、革に対して有害な成分を含むものが多くあります。
家にあるもので代用したい気持ちはわかります。
ですが、設計外の薬剤に触れると、目に見える汚れが落ちたとしても、内部に少しずつダメージが残り、ある日ひび割れや変色という形で表面化します。
判断基準はひとつだけです。「革専用に設計された道具を使う」こと。ここでは、代用品としてよく紹介されるものと、それを使ってはいけない理由を簡単に解説します。
食器用洗剤・台所用洗剤
食器用洗剤の主成分は、油脂を分解する界面活性剤です。
この働きは、革に必要な油分も同時に奪います。一度の使用でも、革が乾燥して硬くなる恐れがあります。
「中性だから革にもやさしい」と紹介されることがありますが、中性であっても油脂を分解する作用は変わりません。革靴への使用は避けてください。
酢・重曹などの酸・アルカリ系
酢は酸性、重曹はアルカリ性の物質です。
革は、なめしの工程で弱酸性の状態に整えられています。そこに強い酸やアルカリが触れると、繊維の構造そのものが変質します。
一時的に汚れが落ちたように見えても、革の内部にはダメージが蓄積していきます。インターネット上では「酢でカビが落ちる」といった情報も見かけますが、革靴への使用はおすすめしません。
家具やフローリング用クリーナー
家具やフローリング用のクリーナーは、木材や合成素材を対象に設計されたものです。
革との相性は想定されておらず、成分によっては著しい変色や硬化を引き起こします。
「天然成分配合」と謳われた製品であっても、革専用に設計されたものでない限り、革靴には使わないでください。
洗濯機
洗濯機は、大量の水と摩擦で素材を洗い上げる道具です。
革靴をそのまま入れると、過剰な水分を吸い込んで膨らみ、乾いたあとに縮んで元の形には戻りません。
接着剤の剥がれ、ウェルトの歪み、ライニングの剥離といったトラブルも同時に起こります。どれほど汚れがひどい状態でも、洗濯機を選択肢に入れないでください。
革靴をきれいな状態に保つのに特別な技術は必要ありません。
ただ、各箇所に合わせた手入れを行うこと、そして家庭にある代用品は革専用の道具の代わりにはならないこと。この 2 つを理解しているかどうかで、5 年後、10 年後の靴の状態は大きく変わってきます。
道具を選び、決まった手順で整える。その積み重ねこそが、革靴ときれいな状態で長く付き合っていくための最も確実な方法です。