スエード靴を傷めずにきれいにする正しい手順と道具
スエードは、革の裏側を起毛させた繊細な素材です。
光の当たり方や毛並みの向きひとつで、表情がやわらかく変わります。スムースレザーにはない、独特の深みを持つ革です。
ただ、その繊細さゆえに、手入れを怠るとすぐに違いが表れます。色がくすみ、毛並みが乱れ、本来の質感が失われていきます。
この記事では、スエード靴を傷めずにきれいに保つための方法をお伝えします。
スエード靴の手入れを怠ると起きる問題
スエード靴の手入れを怠ると、主に三つの問題が表面に出てきます。
埃によるくすみ、毛並みの潰れ、そして毛羽立ち。いずれも、毎日履いていれば誰のスエード靴にも起こりうる変化です。
それぞれ、どのような状態を指すのか、順に見ていきます。
1. 埃をかぶって色がくすみやすい

スエードの起毛した毛並みには、埃や砂、チリなどが溜まりやすいです。
これらを放置すると毛並みの奥まで入り込み、表面の色がくすんで見えるようになります。
2. 毛並みが潰れて色が変わってみえる

スエードの毛並みは、どこかにぶつけたり擦れたりすると、毛並みが潰れて変色して見えます。
スムースレザーの場合、多少表面が擦れても、質感が変わって見えることはあまりありません。
一方、スエードレザーは、擦れると毛並みが荒れてしまい、表面の質感が変わって傷がついているように見えることがよくあります。
3. 毛羽立ちが目立って古びて見える

スエードが毛羽立って古びて見えてくることも、スエード特有の問題です。
長くスエード靴を履いていると、毛並みの長さが徐々に不均一になり、毛羽立ちが目立ってきます。
エイジングという見方もあるかもしれませんが、綺麗にエイジングすることと、ただ単に古びて見えることは、また別の話です。
適切な手入れをしながら綺麗にエイジングを楽しむためには、毛羽立ちを抑える適切な手入れが必要です。
これらの問題は以下の手順で手入れを行うことできれいにすることができます。
スエード靴の手入れの方法
スエード靴の手入れは主に以下の 2 つのことを行います。
- 毛並みについた埃や汚れを払い落とす
- 乱れた毛並みを整える
用意する道具も少なく、手順も簡単です。ぜひ定期的にメンテナンスしてみてください。
必要な道具

1. 豚毛ブラシ
豚毛ブラシは、スエードの表面の埃を払い落とし、毛並みを整えるために使います。
靴の手入れ用品では馬毛や山羊毛のブラシがありますが、程よいコシのある豚毛ブラシがおすすめです。
コシがあることで、スエードの毛並みに付着した埃を掻き出すことができます。
2. クレープブラシ
クレープブラシは、ブラシの毛の部分がゴムになっているスエード専用の道具です。
このゴムの部分が毛並みに引っ掛かることで、潰れてしまった毛並みを起こします。
3. ライター
ライターは、起毛した表面に出てくる毛羽立ちを焼き払うために使います。
履き続けてできたスエードの毛羽立ちは、ブラシだけで取り除くことはできません。
ライターの炎を素早く表面に近づけることで焼き払い、毛羽立ちを抑えます。
それではこれらの道具を使って実際に手入れをする手順をご紹介します。
手順 1:豚毛ブラシで埃を払い落とす
豚毛ブラシを使い、靴の表面についた埃やチリといった汚れを払い落とします。
コバの周りやアッパーの縫い目の際といった埃が溜まりやすい部分は、やや力を込めて念入りにブラシをかけてください。
手順 2:クレープブラシで毛並みを起こす
クレープブラシで毛並みを起こします。
ブラシをしっかりと握り、毛並みを起こすイメージで全体的に強めにブラシをかけます。
毛並みの潰れがひどい部分は、ブラシの角を使い、完全に毛並みが起きるまで強めにブラッシングしてください。
手順 3:ライターで毛羽立ちを焼き払う
ライターの火で毛並みの長さを均一に整えます。
火を近づける時間が長すぎると革が焦げてしまうため、素早く火を動かすのがコツです。
手順 4:毛並みを一定方向に整える
最後に豚毛ブラシを使い、毛並みを一定方向に揃えます。
スエードは、毛並みの方向や見える角度で、色味が変わって見える素材です。
そのため、つま先から踵方向、あるいは踵からつま先方向に、一方向にブラッシングするのがコツです。
「水染み」ができたスエード靴の手入れ方法
ここからは、上の手順では落とせない「染み」をきれいにする方法を解説します。
まずは「水染み(水性の染み)」への対処法についてです。

水染みは、スエードレザーに泥水などが染み込んで乾いた後にできることがあります。
あるいは、雨に濡れたことによって染料などの成分に偏りができて、染みとして残るケースもあります。
いずれの場合でも、水性の染みであれば以下の道具と手順できれいにすることができます。
必要な道具
- 柄付きブラシ
- スエード専用クリーナー
- 水を張った桶
手順
- 桶に水を溜めます。靴を直接水に浸けないように注意しながら、桶の水を柄付きブラシで取り、靴全体を均一に湿らせます。
- スエード専用クリーナーを柄付きブラシで取り、靴の表面にあてて泡を立てていきます。染みのある箇所だけでなく、靴全体を泡立てます。
- 水で靴全体の泡を洗い流します。
- 風通しの良い日陰で 2 〜 3 日乾かします。
「油染み」ができたスエード靴の手入れ方法
つぎに「油染み(油性の染み)」への対処法です。

油染みは、食べ物の油が付着したり、油を扱う作業中についてしまったりすることでできる染みです。
このタイプの染みは、時間が経って繊維の奥まで浸透してしまうと、完全に取り切るのが難しくなります。
以下の道具と手順で、できるだけ早めの対処をしてください。
必要な道具
- コーンスターチまたはタルカムパウダー
- 豚毛ブラシ
手順
- 染みの箇所を覆うようにコーンスターチまたはタルカムパウダーの粉末をふりかけます。
- 数時間そのまま置きます。これらの粉末は油を吸収する効果があります。
- 豚毛ブラシで粉末を払い落とします。
- 染みがなくなるまで、1 から 3 の手順を繰り返します。
スエード靴の手入れに関してよくある質問
スエード靴の手入れに関して、よく寄せられる質問をまとめました。
Q. 色の薄い(白やベージュ)のスエードのケアで注意することは?
A. こまめに手入れをすることと、汚れる前にスエードを保護することが大切です。
白やベージュなど淡い色のスエードは、汚れが目立ちやすいです。
上で紹介したケアをこまめに行うことに加えて、スプレーを使った事前の保護も効果があります。
スエード靴を保護する方法 | スプレーでできること・できないことで詳しい内容を解説していますので参考にしてください。
Q. 手入れはどのくらいの頻度でするべきですか?
A. 月に 1 回を目安に、気になったタイミングでこまめに行うのがおすすめです。
スエードは、履くたびに埃や汚れが毛並みに徐々に蓄積していきます。
月に 1 回程度、今回ご紹介した手順でケアを行うことで、きれいな状態を保つことができます。
雨の日に履いた後や、汚れが目立つと感じたタイミングでは、頻度を増やして手入れをするのがおすすめです。
Q. 染みが取れない場合は、どうすればいいですか?
A. 自宅でのケアで取れない染みは、専門店への依頼を検討してください。
繊維の奥深くまで浸透した染み、特に油染みは、自宅でのケアでは完全に除去することが難しい場合があります。
その場合は、修理やクリーニングを専門とするプロに相談してください。
スエードの手入れは、難しい技術ではありません。
ブラシで埃を払い、毛並みを起こし、火で整える。この繰り返しだけで、スエード靴は長く美しい表情を保ち続けてくれます。
月に一度、靴と向き合う時間を取ってみてください。手入れを重ねた一足が、年月とともに自分だけの表情を見せてくれるはずです。
なお、ブラシの種類ごとの使い分けについては、以下の記事で詳しく解説しています。あわせて参考にしてみてください。